4月28日に山口大学医学部附属病院において、気管切開し誤嚥を防ぐための分離手術を受けたわけですが、術後の2日間については、ICU(集中治療室)で思いのほか快適に過ごしておりました。看護師さんが、四六時中ほぼ付きっきりでしたし、強力な痛み止め(麻薬の一種)の効果もありよく眠れました。
ところが、一般病棟に戻ってくると少し状況が変わってきました。
まず、自身の身体的な面では、元々、口腔内(喉まわり)の反射が強かったところに、手術により喉に穴があき異物(カニューレ)が装着されたことから、更に過敏に反応するようになりました。恐らく麻薬が切れてきたんでしょうね。
少しでも喉に刺激が加わると発作のようにむせ返るようになりました。
痰の吸引時はもちろんのこと、少し上体を動かすだけで身体が硬直してひきつけを起こしたような状態になるわけです。これは痛いとか苦しいといった感覚とはまた異なるんですが、何とも言えない不快さで初めて体験する感覚でした。
そこへ、キャリアの浅い看護師さんの登場です。
人材を育成することを要請されている側面もある大学病院の性質上、こればっかりは仕方がありません。
そして、看護師さんたちが行う日々のケアメニューも多岐にわたります。
痰の吸引、傷口の管理、トイレ介助、着替えの介助、リハビリ時の補助等々、他にもたくさんあります。
この時、要領のあまりよろしくない方に遭遇してしまうと、ついつい態度に出してしまうんです。それはあまりにも大人げなく酷かったことだろうと思います。喋れないおかげで罵声を浴びせたりしなかっただけ、まだ良かったかなと思いますが。
いくら大学病院とは言え、ボクのようなレアな病気の患者を目の前にすることはそうそうないでしょうし、病気じゃなくてもただでさえややこしいヤツが、こんなややこしい病気に罹ったとなったら、それはもう、想像を絶するほどのややこしさでしょうからね。
なかには、ボクの病室からナースコールが鳴ると、憂鬱な気分になる看護師さんもいたんじゃないでしょうか。
そんなこんなで、一般病棟へ戻ってから早々に看護師さんから泣きが入ったようです。
確か、戻ってきて二日目の夜だったと思います。
やはり、地域を代表する大きな病院だけあって人材が豊富です。
現れましたよ、看護師のHさんが。
聞けば、この看護師のHさん、過去にボクの出身地でもある大阪でたくさんのALS患者さんを看護してきた経験があるそうで、その扱い方は熟知しているとのこと。
しかも、難病に関するスペシャルな資格もお持ちのようで、山大の大学院への進学を機に宇部に戻り、数年前から勤務されているとのことでした。
このような経歴から、ボクの対処に苦慮していた脳神経内科の看護師さんから、科をまたいで管轄の異なるHさんのもとへ、ヘルプ要請が入ったみたいです。
あー、なるほど、そういうわけか。
そう言えば、ボクが運び込まれた日の深夜、心配そうな面持ちで病室を覗きにきてくれた看護師さんがいらっしゃいました。
あの時の看護師さんが、このHさんでした。
行く末をよく知っているALS患者ということで、気にかけて下さったんでしょうね。
で、この日の夜勤担当のNさんが、Hさんを伴ってボクの病室に現れたので、さっそく挨拶がてらパソコン(miyasuku)を使ってコミュニケーションを取りました。
この頃、喋れないボクにとって一番耐え難かったのが、対応してくれる看護師さんが代わるたびに同じ説明を繰り返さなければならないことでした。
そんな話をしていると、Hさんからの提案でボク仕様のケアファイル(トリセツ)を作って看護師さんみんなで共有しようということになりました。
そうして出来上がったのが、こちらのトリセツです。これは、退院してから頂いたものですが、これの初期バージョンは、打ち合わせをした夜の数時間後、翌日の早朝には出来上がってました。あまりの対応の早さに驚きました。
HさんとNさんをはじめ、お世話になった看護師の皆さん、ありがとうございました!
以上